9月19日に「献上登り窯」のイベントに大川内山に訪れた際、虎仙窯の川副様にお話をお伺いすることができました。
早速ですが、作家さん(職人)の1日について知りたいです!
そこには、体制の問題が存在します。
体制の問題について詳しく見ていきましょうか
(天の声)作家(職人)というワードを聞いた時に、「すべて1人でこなしているんだ!」とイメージするとが人多いかと思うのじゃもん。私もそうだったのじゃもん。(*^ー゚)勿論、1人で作業をこなしている作家さんもいるが、そういった作家さんは「一貫生産体制」をとっているといえるのじゃもん。一貫生産体制で鍋島焼を作っている作家さんは自由に時間を使うことができるため、季節によって作る陶器を変更したり、作業開始・終了時間も自分次第で4年前までは、ものづくりにフォーカスして良いものを作っていれば売れていたので問題はなかったのじゃもん。しかし、InstagramやTwitterといったSNS、口コミサイトといったソーシャルメディアの普及により、情報発信の手段は多様化しており、今では誰もが情報発信が容易な時代となり、そのような時代の変化につれて、いいものを作っても必ずしも売れる時代ではなくなり、いいものを作ることは大前提として、消費者に鍋島焼の魅力や歴史、コラボをした際にはその背景を十分に理解してもらうことが大切になっていているのじゃもん。そして虎仙窯では、一貫生産体制ではなく社内分業体制をとっており、陶器が完成するまでの過程を複数にわけ、開始時間・終了時間を固定し鍋島焼を作っているのじゃもん!!
(天の声)再び登場じゃもん!陶器の市場は、年々衰退しており、その文化を絶やさぬように窯元さんはいろいろな努力をしているのじゃもん。「日用陶磁器」の年間生産金額の推移のグラフを見てみると10年あまりで金額ベースで6割以上も縮んでおり、原因として和食の比率が低下している食文化、生活様式の変化、長引く不況による内需不振、外国製品の流入などが考えられるのじゃもん。鍋島焼に関していえば、佐賀県観光協会から聞いたお話によると、昔は結婚式などの披露宴は、自宅に関係者を招いて行っていたらしく、そういった際にブランドである鍋島焼のお皿やお茶碗などを使用していたのじゃもん。しかし、結婚式を自宅であげる時代は終わり近年では、核家族の増加も影響して鍋島焼といった高級なお皿を使う機会がなくなってしまったのじゃもん。そして、上記にも述べたようにSNSなどのソーシャルメディアの普及により、口コミなどのレビューによる評価や消費者に魅力や歴史などを理解してもらうための情報発信が大事となり、ただいい物を作るだけでは売れない時代になっているのじゃもん。そこで、虎仙窯は鍋島焼が隆盛していた時代に注目をしたのじゃもん。鍋島焼は、17世紀から19世紀にかけて佐賀藩(鍋島藩)において藩直営の窯で製造された高級磁器で、その頃の藩窯には組織が存在しており、細工方11名・画工9名・捻細工4名・下働き7名の31名から構成されていたのじゃもん。他にも「御手伝窯焼」として本手伝10名、助手伝6名がおり、その他御用赤絵屋、御用鍛冶屋、御用土伐、御用石工、薪方頭取などの諸職が存在し、これらの職人によって磁土の精製・成形・染付・本焼き・色絵などの工程が分業で行われて、さらに磁土を採掘する人、薪を供給する人などもいたのじゃもん。このように鍋島焼が隆盛していた時代は、一貫生産体制ではなく、組織を作り分業体制を敷いていたという歴史から学びを得て、虎仙窯は分業体制をとりいれたのじゃもん。(他にも理由はあると思うが分業体制を取り入れた大きな理由の1つであることには間違いないのじゃもん)
- 「日用陶磁器」の年間生産金額の推移のグラフ⇒https://www.sbbit.jp/article/cont1/37077
歴史を尊重し、そこからアイデアをいただくという考え方はとても勉強になりました!
では、現在何か取り組まれてあることはありますか?
(天の声)まかされたのじゃもん!!いい物を作っても売れない時代の流れの変化に対応するために、虎仙窯は問屋をはさまないで商品を販売しようと考え、自社ブランド「KOSEN」を立ち上げ直接販売を開始したのじゃもん。さらに4月末には、大川内山の複数の窯元と協力して、伊万里鍋島焼のオンラインショップを開設し、作家の選りすぐりの品を集めたセレクトショップを開催したのじゃもん。6月からは、「魔除け」の意味合いをもつ風鈴を販売する風鈴市を開催し、11の窯元から風鈴や器など約100点を厳選し、職人目線で商品の特徴や技術力を紹介していて、なんといっても最大の特徴は風鈴の音色も聴くことができることなのじゃもん。いままでにない画期的でおもしろい取り組みといえるのじゃもん!!期間限定での開催であったため風鈴市は終了してしまったが、なんと11月頃に公式にホームページで掲載する予定だそうなのじゃもん。いつでもきれいな風鈴の音をネット上で楽しむことができる!なんて素晴らしいことなのじゃもん。他にも梨や蜂蜜などの地元産品と器をコラボさせた「鍋島焼からの贈り物」というイベントもやっていて、ただ地元食材とコラボするのでは、多くの地域でそのようなイベントはごまんとやっていて効果はあまり見込めないことが分かっているため、幼稚園からの幼なじみで、それぞれ梨と陶器一筋で生きてきた人が大川内山を盛り上げるために協力するというストーリーを加えることで差別化を図っているのじゃもん。
新しいことにどんどん挑戦してあるんですね。
100年後に残せるようなもの作りを目指しています。
今後の展望についてお聞きしたいです!
(天の声)我が輩、参上なのじゃもん。現在、コロナによる影響で、オンラインでの観光や工場見学など、バーチャルなものが増えてきていることもあり、今後はバーチャルを使った取り組みを行っていきたいと考えているのじゃもん。そのため、今はバーチャルを使った様々なことを体験して勉強をしているのじゃもん。そして、最終的には昔の弘道館といった藩校のような学校を作り、陶器に興味がある人が学べる場所を作っていきたいと考えていて、それは、鍋島焼文化を残すこと、100年後に残すためのモノづくりにひもづけることができるのじゃもん。
本日は、お忙しい中ありがとうございました。
<まとめ>
年々、陶器の売上・需要は低下してきており、「やきもの」の市場はどんどん冷え込んできている。良いモノを作っても売れない時代になってしまった。さらに今年はコロナの影響で大川内山に関していえば、観光客は例年の10分の1にまで落ち込んでおり、より危機的状況に陥ってしまった。そんな状況を打破するために虎仙窯を中心に大川内山の窯元が協力し合って、オンラインショップを開設したり、さらに風鈴市ではオンライン上で風鈴の音を聴けるようにするなどこれまでにない試みを行っている。また、伊万里の梨と器がコラボした「鍋島焼からの贈り物」のイベントの際には、ただ地元の食材とコラボするのではなく、幼なじみであり伊万里を盛り上げたいという共通の思いを持った2人がコラボするというストーリーを大事にしていた。いい物を作るだけでは売れなくなった時代では、イベントを1つやるにしてもそのイベントを行うことになった背景(プロセス)に価値がつくという。大川内山の魅力を多くの人に伝えるため・鍋島焼文化を残すため・100年後に残すためのモノづくりをするために、今後はオンライン観光などのバーチャルをつかった新たな取り組みを行いたいと考えている。