no1.
ふれあいフェスタ2016~こらぼらQでん~
イベント概要
このイベントは、2016年12月24日の土曜日に佐賀県にある「どんどんどんの森、ふれあい広場」で開催された。「ふれあいフェスタ」というイベントは、九州電力のCSR活動の一環として行われている「こらぼらQでん」と佐賀県の自治体が協力して毎年行われているイベントで、私たちもその運営をお手伝いしながら、当日は「ステージ発表」の時間をいただき「地域交流」をテーマとしたプレゼンを行った。風船アートやダンスショー、電気関接工具体験など、見て・遊んで・学べて楽しめる、盛りだくさんのイベントでした。
調査・研究目的
近年、全国的に中心市街地の衰退とあわせて、地域住民の活動の核となる地域コミュニティの衰退が問題となっています。今回、私たちは、地域に住む人々が再度自らの手で生み出したまちの魅力を周知するよう働きかける必要があると考えました。そのための方法として、コミュニティの役割や重要性を伝え、その存在を意識してもらうというゼミ活動のコンセプトを考えるに至りました。
先行研究・事例
「お祭りやイベント」が地域コミュニティの形成と外貨の獲得を両立している例として、 2016年度の夏合宿で訪問した北九州市八幡東区で毎年開催されている 「ふるさと起業祭八幡」というお祭りを挙げることができます。 「ふるさと起業祭八幡」は、1901年に八幡製織所の起業式として始まり、八幡製鏡所が全ての運営を担っていたお祭りです。 しかし、 1975 年前後に鉄鋼業の経営不振によって、祭りの単独資本による継続が困難になった際、市民が新たに実行委員会を立ち上げ、一から多種多様な地域企業·団体に協力を依頼して、1985年に運営体制を再構築し、 継続的に開催されるようになって現在に至ります。 直近のイベントではステージに地元のダンスチームやバンドグループが多数参加し、地域の企業がバックアップする体制をつくることで地域全体を巻き込んだ交流を生み出しています。私たちは、コミュニティや交流が衰退してしまった場所、あるいは元々なかった場所に新たなコミュニティを生み出すには、大きなきっかけが必要であると考えました。読売新聞生活情報部(2008)によると、2004年に誕生した大阪府茨木市のニュータウン「彩都」のまちづくり活動を支援する「彩都コミュニティ広場」は行政との仲介やイベントの実施に自治会が必要であることを訴え、1世帯ずつ参加を呼びかけたそうです。その中で、自治会初代会長の梅本修平は、“規約などの細かい問題より、組織をつくることを優先し、不都合があれば、適宜改めれば良い” とし、同書では“まちづくりには最初の場づくりが肝心” と述べています。 これらのことから、佐賀市の現状と照らし合わせ、新たなコミュニティの形成のきっかけ· 手段として、イベントが生み出す地域への影響力に注目しました。私たちのゼミでは、九州電力の CSR 活動の一環として行われている「こらぼら Q でん」 と佐賀駅北口側の自治会 (神野、 高木瀬、 若楠地区)の連携事業として、 2015 年から開催されている「ふれあいフェスタ」 へ参加する機会をいただき、 「ふれあいフェスタ」 の運営会議に出席させていただきながら、地域活性化を学ぶ学生として私たちにできることは地域コミュニティの重要性を伝えることであり、「地域交流」 をテーマにしたステージ発表を行うことで、このことを実現しようという考えに至りました。
アンケートデータ分析
SNS 利用者が興味を示す分野を調査し、階層分析法( AHP )を使用して、各分野における情報の発信·受信に対する姿勢や SNS 非利用者との差異を分析するため、SNS を日常的に利用する者とそうでない者を分別しました。その結果70名中 55名がSNS を利用していると回答しました。
また各年齢層が感じる佐賀県の魅力を SNS 利用者非利用者別に集計し並列したところ、割合的に SNS 利用者は非利用者に比べて食べ物やイベントへの関心が強く、一方で食べ物以外の特産品への関心の割合は小さいことが分かります。 SNS 非利用者はレジャー施設、 飲食店(レストラン·カフェ) に魅力を感じると回答した人数が 0 であるのに対し、利用者にはレジャー施設、飲食店に魅力を感じる層が 20~ 50代に存在することが分かりました。さらに各年齢層が感じる佐賀市の魅力を SNS 利用者 非利用者別に集計し並列したところ、 佐賀市においては食べ物へ関心を持つ割合は SNS 利用者·非利用者の間に差はないですが、イベントへの関心はやはり SNS利用者の方が高いことがわかりました。 そして、県同様レジャー施設と飲食店には SNS 利用者のみ関心を持つ層があり、特に飲食店に魅力を感じると回答した人数は県よりも多いことも分かりました。ILINE」は主に知人友人との連絡手段として使われるが、他の SNS は不特定多数の人への宣伝や情報共有の手段として利用されるため、 SNS 利用者ほど投稿の話題として取り上げやすい「イベント」や「飲食」「施設」に対する興味関心が高くなっていると推察されます。
AHPによる分析
質問①では、「まちの情報発信を行うにあたっては、何を判断基準にするか」について評価基準を「観光名所」、 「伝統工芸」、 「食べ物」、代替案を「県内の人で共有」、 「県外の人へ向けて発信」 と設定して、 回答してもらいました。その結果、県内の人で共有するよりも県外の人に発信する人が多く、全ての項目において県内の人で共有するよりも県外の人への発信を選択する傾向にあることが判明しました。 「県内の人」、 「県外の人」 のどちらの項目においても「食べ物に関する要素」 の割合が最も高く、 これは、 食べ物は観光名所や伝統工芸に比べ、普段の生活の中でも身近なものであり、 県内や県外に関わらず発信しやすい情報であるためと考えられます。
質問②のでは、「まちの情報受信を行う際、 何を判断基準にするか」 について回答してもらいました。 その結果、観光案内所よりもホームページ(以下HP と表記する)で情報を受信する人が多いことがわかりました。 これは、「HP」がどこでも簡単に情報を受信できる手軽さに特化しているためであると考えられます。「HP」と「観光案内所」のどちらにおいても「食べ物に関する要素」、「観光名所に関する要素」、「伝統工芸に関する要素」という順の結果となり、受信方法に限らず、受信したい項目に対する比率は変わらないことも分かりました。
考察
今回私たちが実施した、 イベントを開催しそこに多くの人が関わる流れの創出は、新たなコミュニティ形成のきっかけとして有意義であると感じました。今後はその流れが地域に定着するよう、一度行ったイベントを次年度以降も継続して行い、 コミュニティを拡大していくことが求められます。 その補助的な要素として、来場者アンケート調査から得られた、 情報収集におけるインターネット及び SNS のウェイトの高さに注目しました。全国的にも自治会 (自治体) や地域に限定された地域 SNS と呼ばれるサービスが広まっており、現在では 300近い数があるとされています。 地域で行われるイベントや活動、 あるいは地域で活躍する人や団体一つ一つを知らせる機会·知る機会を作り、関わりたいという思いを実行できる環境をつくることが必要であり、そうして広がる関係性やコミュニティが地域の活動の担い手を増やすことが、地域活性化の可能性に繋がると私たちは考えました。
no2.
G‐mottyであなたの景色を地図にしてみよう!
イベント概要
このイベントは、2016年12月23日にシアターシネマの会場をお借りして参加者11名の3部構成で開催された。第1部では、地域の魅力発信についての発表、第2部では、町歩き、第3部では、塩田氏講演会が行われた。塩田氏は、平成25年に周辺自治体と地理情報システムの共同利用を開始し、地元企業と共同で「G‐motty」を開発した。今回、私たちは「G‐motty」の存在に着目し、地域に関心を持ってもらうためのきっかけになるのではないかと考えた。
調査・研究目的
地域活性化で理想とする「自立できる経済システム」の構築のためには、地域に関わる人たちが主体的に考え、域外に地域の魅力を発信していく力をつける必要があります。 しかし、佐賀県は住人でさえ「佐賀には何もない」とロをそろえ、 就職や勉強のために他の地域から来た若者もその魅力を知ることなく佐賀県を離れていくという状況にあり、PR するチャンスを逃してしまっています。 ここから、佐賀の魅力を知ってもらい、地域活性化について考えてもらうきっかけを作るというコンセプトを考えるに至りました。
先行研究・事例
地域資源の発掘がまちの経済活性化のために重要である、ということが長年叫ばれています。 中村 (2014) は、①域外マネーを獲得すること、の域内で付加価値を生み出すことが持続可能な地域経済を作るために必要だとしたうえで、これらを可能にするためには、地域資源の有効利用が不可欠だと述べています。実際に地域資源を有効利用した例として、佐賀における江崎グリコがあります。長年広く親しまれている江崎グリコのキャラメル「グリコ」は、創業者である江崎利一が有明海で牡嘱の煮汁が大量に捨てられているのを目撃したことから生まれました。 グリコーゲンという栄養素が牡嘱に大量に含まれているという情報を新聞で読んだ記憶から、 牡蝋の煮汁を活用し研究を進め、現在の形にまで至りました。地域資源に目を向け、大きな利益を生み出した例です。近年の地域資源を有効利用した例として、北九州市立大学とクラウン製パンの共同開発による『合馬ファイバーらすく』を挙げることができます。この事例は、北九州市の企業と大学が連携し、北九州市の地域資源を活用して新製品を作り出しているという点で優れています。 「竹害」と呼ばれ地域の厄介者扱いだった竹を利用し、食物繊維の豊富な『合馬ファイバーらすく』として売り出すことに成功しています。これらの事例をもとに、本ゼミの活動では、地域資源に目を向ける標会を作ることを目標に設定しました。この目標を実現するにあたって、2016年の夏合宿で訪問した北九州市の地域情報ポータルサイト「G-motty」の「みんなで作る地図」の存在に着目しました。従来、行政(あるいは企業)が情報を発信するのみであった場が「みんなで作る地図」により情報を共有する場になっている。「地域にあるもの」を活かすという共通のテーマのもと、 様々なものに目を向ける機会を作り、 共有しようとしたり、共有してもらったりすることで、地域に関心を持ってもらうことができるようになるのではないだろうかと考えました。このような発想のもと、「みんなで作る地図」 の佐賀版を作成するイベントを企画して、 佐賀市の中心市街地の南側に位置するミニシアターであるシアターシェマと連携し、場所をご提供いただきました。その上で、講師として「G-motty」の管理·運営を行う北九州市総務局情報政策課主査塩田淳氏をお招きし、ESRI ジャパン株式会社筒井慧氏、株式会社ゼンリン村田尚巳氏、新名聡氏の協力のもと、 まち歩きと地図作成、講演会からなるワークショップという形で開催しました。 2016 年 12月23 日に実施したイベントにおいて、 イベント参加者に情報発信や情報受信をどのように考えて、どのように意思決定しているのかを知るための情報収集として関するアンケート調査を行いました。
アンケートデータ分析
図1は「住む地域に何があると魅力を感じるか」の集計結果で、図2は「どのような魅力にひかれて遊び·観光に行くか」の集計結果です。これらを比較しながら見ていきます。どちらの質問でも上位に来るのは「レストラン·カフェ」や「特産品(食べ物)」で、食べ物に強く関心を持っていることが分かりました。また、スポーツやレジャー施設は下位に位置しており、どの地域にも存在しうるものではなく、地域特有のものに魅力を感じていることが分かりました。さらに、住む地域の魅力では、回答にばらつきがあるのに対し、 観光に行く場所の魅力は比較的まとまっています。これにより、誘因となる魅力は食べ物や観光名所などに傾倒していることがわかります。
AHPによる分析
質問①では「まちの情報をどのように発信したいと思うか」について評価基準を「お店」 「歴史·文化」「イベント」、代替案を「不特定多数の人に発信」「身近な人に発信」と設定して、回答してもらいました。回答結果より、「身近な人に対する発信」ではお店、イベント、歴史·文化の順で重視されているのに対し 「不特定多数の人に発信」ではイベント、歴史·文化、お店の順になりました。 身近な人にも不特定多数の人にも同程度に発信したいという気持ちがあるものの、発信したい情報の内容はターゲットにより異なってくることが分かります。
質問②では「どのような表現方法の情報を受信したいと思うか」について評価基準を 「印象の良さ」「わかりやすさ」「得られる情報の量」、代替案を「写真」「文字」 「図」 と設定して、 回答してもらいました。回答結果より、最も好まれる表現方法は写真で、次いで図、 文字の順となっています。得られる情報量はどの表現方法も大差がなく、わかりやすさと印象の良さで優れる図と写真が好まれています。 特に写真には印象の良さがあり、その点で他のものよりも好まれています。
考察
今回、私たちが実施したイベントとその参加者のアンケートデータの集計·分析を通して、まち歩きや新たな情報発信ツールを用いたイベントを開催することは、地域に目を向けてもらう機会を作るとともに、 行政や企業だけでなく個人での情報発信を活発にするという点で意義があると考えられます。一方で、発信源となる人が情報を発信する際に大切なことは、拡散する人が発信したいと考える情報を、ターゲットや利用する SNS の特性に沿った形にして提供することです。そのための理想は、情報の発信源となる主体が、求められる情報を精査し、今回のようなイベントやパンフレットなど、様々な方法を利用して飽きられないような工夫をしながら、継続して発信していくことです。その意味では、私たちの今回の活動は、まち歩きイベントという手段を用いて参加者に佐賀の情報(魅力)を発見してもらい、得た情報(魅力) を拡散するまでの一連の流れを体験してもらう場という位置づけです。今回のイベントはあくまで魅力を広める一つの手段であるため、多様に存在する方法を駆使し、今後も活動を継続的に行っていきたいと思います。