no1.
BtoB企業と文系学生の採用・就職活動の情報二関する調査・研究
イベント概要
2020年11月18日(水)にオンライン(Webex)で開催され、文系学生とBtoB企業、BtoBtoC企業の意見交換会を通じて文系学部出身者のBtoB企業での働き方やBtoB企業の魅力を知り、視野を広げることを狙いました。このイベントでは、イベントの前と後でアンケートを実施し、AHP・クラスター分析を使用して、学生が就職活動時に得られる情報の中で何を重要視するか・BtoB企業での文系出身者の働き方やBtoB企業の魅力のインプットが学生の就職活動や仕事の志向にどう影響するのか分析しました。
調査・研究目的
我々文系学部生は選択肢を最初から狭めた状態で、就職活動を行っていることが多い。文系学生の就職先は営業が多いが、法人営業やとりわけ技術営業にイメージが持てず、 BtoB企業に関心を持たないことが多い印象があり、BtoB 企業に対して先入観や壁を感じている。そこで、文系学部生の就職活動と仕事の視野を広げることを目的とした BtoB 企業、BtoBtoC 企業特化型の本プロジェクトを企画・実施した。本研究では、文系学部生の就職における BtoB企業と BtoC企業の志望度を、就職活動の進捗度合によって分類し、学生が企業を選択する際に重視する情報、また、BtoB企業と BtoC企業のどちらに就職したいかをアンケートデータに基づき分析し、イベント前後で比較する。この分析を行うことで、学生が重要視する企業情報や BtoB 企業・BtoC企業の志度合い、イベント前後での就職活動と業務の視野の変化を明らかにすることができる。
先行研究
大田(2007)によると、 技術系・製造系メーカーといった専門性の高い業界の文系学生に対する就職求人ニーズは根強い。なぜなら、これらの企業は専門知識の高い技術系(理系)学生とともに、 マネジメント能力に優れ、経営バランス感覚のある文系学生を多く採用したいと考える傾向にあるためである。 しかしながら、 こうした企業側のニーズに対し、 実際に技術系·製造系メーカーに就職する文系学生の比率は低い。その理由の一つとして、 文系学部の学生の中には理系·技術系に苦手意識を持ち、 敬遠する者が多いことが挙げられる。下村・木村(1994) によると、 学生の就職活動の進捗段階によって違いがあることが示されていた。 就職関連情報源の利用度、 重視度を検討した結果企業からの情報の利用度に傾向差があった。しかし、学生が企業のどのような情報を求めているのかについては示されていない。そこで、本研究では、企業から得られる採用情報の中で、文系学部生がどの項目を重要視しているかを分析したい。
アンケート調査概要
本研究では、イベント前後で3つの種類のアンケートを佐賀大学に所属している文系学生に対して実施した。1種類目の事前アンケート①では、 クラスター分析を用いて就職活動時に得られる情報の項目を学生の重要度によって分類するために、項目を羅し5段階評価を行った。2種類目の事前アンケート②では、 AHP を用いて、 現段階で学生は就職する際に BtoB企業と BtoC企業のどちらを選択するのかを調査した。AHPではクラスター分析によって分類された6つの群を評価基準として設定した。3種類目の事後アンケートでは、事前アンケートと同様に AHP を用い、イベント前 (事前アンケート②) とイベント後(事後アンケート)を比較し、BtoB 企業での文系出身者の働き方や BtoB企業の魅力のインプットが学生の就職活動や仕事の志向にどう影響するのかを分析した。
クラスター分析の集計結果
「基準 A」は、項目データ群のうち、ボーナス、一日の仕事業務の時間、有給休暇取得率、 月平均残業時間で構成されている。「基準B」は項目データ群のうち、持続的な研修制度の充実度合い、各種保険の有無、 離職率で構成されている。「基準C」は、項目データ群のうち、 選考の基準 (面接での着眼点等)、育児休暇暇制度、 産休育休からの復帰率で構成されている。「知名度·採用数」は、 項目データ群のうち、CSRの内容、 企業が提供する製品·サービスの知名度、文系学生の採用数、 家賃補助、企業名の知名度で構成されている。「将来性」は項目データ群のうち、副業·兼業の可否、健康診断や人間ドッグ、会社全体の男女比に対するトップ層の男女比で構成されている。「やりがい」は項目データ群のうち、 休日、 仕事内容、勤務地、給料 (手取り)、やりがいがあるかどうかで構成されている。
AHPの概要①
本研究では、学生が就職活動を行う際に企業に対してどのような情報を重要視し、現段階でBtoC企業と BtoB 企業のどちらに就職をしたいと考えているのかについて分析を行う。先ほど示したクラスター分析の結果から6つの基準を評価基準とし、「BtoB企業」、「BtoC 企業」を代替案として調査した。
AHPの概要②
下村,木村(1994)によると、学生の就職活動の進捗段階によって違いがあることが示されていたので、 就職活動状況によって考え方が違うと考え、アンケート項目に「未着手」、「就職活動中」、「内定取得済み」を設け、この3つと全体の4つに分けて分析を行った。
AHPの集計結果
図2より、事前アンケート②の AHP 結果の総括アンケートに回答した学生の中で、就職活動をしていない学生と就職活動をしている学生は、BtoC企業により魅力を感じる学生が多い。しかし、内定を取得した学生においては、BtoB 企業のほうがより魅力を感じていることが分かる。これは、就職活動を通して BtoB企業と出会い、BtoB 企業のことを深く知り魅力感じたからではないかと考える。アンケートに回答した学生では、BtoB企業と BtoC企業では重要視する要素が異なることが分かった。 このことから、学生は、BtoB 企業と BtoC企業は別物であると考えているのではないかと考える。就職活動の状況別にみると、 BtoB企業、 BtoC企業に関わらず「未着手」の学生は、 入社してからの仕事について知りたいと考えており、 新しい情報など学生自身が知らない情報を得ようとして重要視していることが分かる。 そして、 「就職活動中」の学生は、学生自身が今まで収集してきた情報や既知の情報に頼りながらも、新しい情報を取り入れていることが分かった。最後に「内定取得済み」の学生は「就職活動中」の学生と似たような傾向が兄られた。よって、 「未着手」の学生に対して、 本イベントを行うことができたら、学生の志向 (ベクトル) の転換が大きくみられるのではないかと考える。
図3の事前アンケート②と図4の事後アンケートを比較する。イベント参加後の学生は、BtoC 企業から BtoB企業に就職することに魅力を感じる学生が増加した。基準ごとで見ても BtoB企業を選ぶ要素が高くなっていることからも、 BtoB企業に興味を持ったり、魅力を感じたりしている学生が増加したことが見て取れる。就活状況の段階別では、「就職活動中」の学生に顕著な変化がみられ、BtoB 企業を魅力に感じる学生が増加したことが分かる。今回のイベントが BtoB 企業に特化したものであり、各基準が BtoC 企業よりも高くなったのは、イベントを通して BtoB企業の魅力を感じる学生が多かったことが分かる。
考察・まとめ
イベントに参加した学生は、BtoB企業により魅力を感じ、今までの就職活動時の志向(ベクトル)とは異なる志向 (ベクトル)に転換することができた。これは、BtoB企業でも文系出身者が活躍されていることを知り、今までの BtoB企業に対する先入観を取り除くことができ、BtoB 企業に対する壁をなくすことができたからだと考える。また、 就活状況で見ると、「就職活動中」の学生が一番ベクトルの転換が顕著に見られた。よって、仕事のイメージを持ち始めた「就職活動中」の学生に対して、 BtoB企業の仕事内容などの基本情報を提供することで大きなベクトルの変換が起きると考える。今回のアンケート回答数はそこまで多くないため、普遍的な結果ではないが、今回の調査回答者の傾向は上記のとおりである。
先行研究でも述べたように、下村・木村 (1994) によると学生の就職活動の進捗段階によって違いがあることが示されている。今回我々も就職活動の進捗段階に分けて分析を行ったところ、 段階別で志向に違いが確認できた。 このことは、1994年から現在まで、学生の就職活動での意識が変化していないことを示唆している。つまり、1990年代という随分と以前から存在する学生の就職活動の進捗段階ごとの意識と企業の採用活動の間で発生するミスマッチは、30年経ってインターネットが普及し情報化社会が進んだ今日でもいまだに解消されていないことを表しているものと推察できる。
no2.
鍋島焼に関する研究調査
イベント概要
このイベントは2020年11月15日(日)に、佐賀県鹿島市で行われた酒造祭りに合わせて、開催されました。空き家をレンタルし、大川内山の動画を視聴してもらったり、実際に鍋島焼に触れてもらうなど、鍋島焼について学ぶことができるブースを設け、アンケートも実施し、鍋島焼二関する研究調査を行いました。多くの人に足を運んでいただき、120部用意していたアンケートは、すべて記入してもらった状態で終えることが出来ました。
調査・研究目的
佐賀県は吉野ヶ里遺跡や佐賀城本丸歴史館など歴史・文化の観光地、虹の松原や九年庵といった自然や景観を楽しむ観光地が多くある。また、佐賀インターナショナルバルーンフェスタなどのスポーツイベントもあり、嬉野温泉など温泉の地としても有名である。そして佐賀県は、日本で初め磁器が焼かれた場所であり、現在も焼き物の産地としても有名である。特に「有田焼」は有名で1896年から 開催されている「有田陶器市」では全国各地から毎年多くの観光客が訪れる。和食の比率が低下している食文化、生活様式の変化、長引く不況による内需不振、外国製品の流入などで焼き物市場全体が落ち込んできている。鍋島焼に関していえば、昔は結婚式などの披露宴は自宅に関係者を招いて行っていたので、そういった祝い事の際にブランドである鍋島焼のお皿やお茶碗などを使用していた。しかし、結婚式を自宅であげる時代ではなくなり、近年では核家族の増加も影響して高級なお皿を使う機会が減少している。我々は、大川内山で鍋島焼の歴史や魅力に触れ、焼き物の消費が落ち込んでいる現状を知ったことから、佐賀の重要な観光資源である焼き物、特に鍋島焼·大川内山に着目した。鍋島焼のさらなる利用や需要を喚起することを目的として、 お酒で有名な佐賀県鹿島市に注目し、 お酒と絡めて鍋島焼の酒器としての需要、焼き物とふれあうツアーの需要をアンケート調査を実施することにした。本研究では、アンケート調査で得られた回答をもとに、複数の質問項目 の結果を集計·分析し、 鍋島焼の酒器としての需要を調査する。さらに、焼き物にふれあうツアーの支払い意思額を計測し、支払い意思額の形成要因を分析する。
先行研究・事例
井上(2020)によると、我が国の伝統工業産業は、1983年にピークを迎え、バブル景気時に上昇に転じたが、1990年以降、下降傾向にあり、この下降の原因は複合的であるということを示している。また釜堀(2018)によると、伝統工芸品産業の場合、多くの企業は10名以下の従業員で構成されており零細企業である。一方、休賀県への観光客数は伸びていることが示されている。
これらにより佐左賀県内への観光者数は増加の傾向にあるが、伝統工芸産業の規模は縮小している。そのため佐賀県を訪れる観光者に伝統工芸品をアプローチすることが伝統工芸品産業の衰退を防ぐためのひとつの命題であると考える。伝統工芸品である鍋島焼の需要調査を行い、支払い意思額の調査や CVM フルモデルによる属性ごとの需要を詳しく調べた研究は少ない。そのため、 我々がこの研究でCVM を使った分析をすることは意義があると考える。
アンケート調査と分析
アンケート調査は、2020年11月15日(日)のイベント開催と同時に開始した。アンケート調査票は、質問内容が一部異なった3つの調査票を用意した。今回のCVM の調査では、栗山・拓植・庄子( 2013)に基づき、ダブルバウンドの二段階二肢選択方式を用いて、質問を設定した。アンケート調査のCVM は図1 のフローチャートで質問を設定した。アンケート回答者に鍋島焼体験型ツアーの仮想の金額を提示し、最初の提示額でツアーに参加すると答えた人にはより高い金額を提示し、最初の提示額でツアーに参加したくないをという人には、より低い金額を提示した。
本研究では鍋島焼の歴史を勉強し、焼物作りを体験するツアーを提示し、そのツアーに対するの支払い意思額を調査した。まず CVM分析とGIS 分析を用いて距離ごと
に支払い意思額に変化はあるのかを調査し、CVM をフルモデル化することで、どの要素が支払い意思額に影響を与えるかを分析した。なお、CVMによる支払い意思額、
CVM のフルモデルの推定などを行った。支払い意思額の中央値は17825円で、 平均値は裾切なしで19867円である。つまり、17825円を提示したとき、YES 回答と NO回答の効用が等しくなっている。分析結果より鍋島焼体験ツアーの支払い意思額は、中央値17825円、平均値19867円と読み取れる。10000円を提示した際のYES 確率は8割を超え、15000円の提示の際は 6割を超えていることが読み取れる。
CVM フルモデルの推定結果から、「旅費」、「酒は好きか」、「大川内山を知っているか」が有意に正、「旅行回数」は有意に負であった。解釈としては、支払い意思額を増加させる要因として一年間の旅費が多い人や、大川内山を知っていることや、酒器にこだにこだわりを持っている、またツアー場所までの距離が遠ければ遠いほど支払い意思額が高くなっている。上記の大川内山を認識しているかどうかに対し支払い意思額が高くなることから、正しい知識やその事物の歴史を知っていることにより、その商品や体験に多く支払っているということがということが読み取れる。また、焼き物とお酒の関係性も極めて重要であり、お酒にこだわりをも持っている人は酒器などのお酒に関するものにも多く支払う傾向があることがわかった。
まとめ
お酒が好きな人は自分用に酒器を購入する可能性を十分に期待できるのではないか。また、自分用ではなく贈り物としての購入の可能性も考えることができる。以上のことから酒器は、多くの消費者が手に取ってくれるのではないかと考える。さらに鍋島焼という高級磁器は、将軍に献上するために作られてきた歴史があるため、 贈り物としての特別感がさらに増して、贈り物としては最適ではないだろうか。
no3.
公共交通機関と交通系ICカードに関する調査
調査・研究目的
本研究の目的は、佐賀大学の学生に交通系ICカードの普及を図ることで、既存の移動手段(バス、コミュニティサイクル、徒歩)を組み合わせて選択の幅を広げるとともに、スムーズな乗降を可能とすることによって、学生のモビリティを高めることができることを提示し、交通系ICの利活用の要因をロジスティック回帰分析で明らかにすることである。佐賀県をはじめ大部分の地方は自動車社会のもと都市開発が進んでおり、公共交通の維持に課題を抱えている。さらに、佐賀県(特に佐賀市内)は平坦な地形が広がっているため、自転車での移動も容易であり、自動車を持たない若年層の主要な交通手段となっている。佐賀大学の学生も、登下校手段として自転車を利用している学生が大半である。佐賀市内の公共交通機関として最も頻繁に目にする「バス」は利用率が低く、空気を運んでいるバスも少なくはない。
そのために、佐賀駅周辺駐輪場や交通系ICカード(nimocaなど)に関して聞き取り調査を行う。それを踏まえて、既存のバス・コミュニティサイクル・徒歩を組み合わせた新しい登下校手段と、駐輪場を定期契約しての登下校のどちらに学生は魅力を感じるのか、また、学生証に交通系ICカードの機能を搭載する必要性を感じるのかどうかについてアンケート調査を行う。アンケートデータをもとに、学生証に交通系ICカードの機能を搭載することに必要性を感じる学生は、どのような要素(通学距離、キャシュレス決済の有無など)を持っているのかなどを分析する。
先行研究
多くの都市では、主たる公共交通機関は、路線バスである。青木(2000)にもあるように、バスの輸送人員は1969年度の101億人をピークとして減少傾向にあり、1997年度は54億人と、ほぼ半減している。人口10万人台の地方都市では、利用者が減少した結果、市内から一時、バス路線が全廃された都市や生活路線の指定を受け、補助金を得て運行されたり、市町村代替バスにより路線を維持している場所も存在するという。この論文では、主に地方中核都市(主に人口30万人から50万人程度の都市)が取り上げられている。地方中核都市とはされていない佐賀市でも、交通状況として、公共交通分担率の低下と自家用車利用率の上昇という2つの傾向が見受けられる。湯川(2008)は、地方都市の公共交通を取り巻く環境の特徴をあげている。地方都市では、旅客流動に占める自動車の比率が高いのに対し、公共交通の整備・支援が十分に行われておらず、混雑の発生や公共交通網のサービス低下により移動の利便性、快適性が損なわれていることを課題として指摘している。自動車を利用して行う移動では、公共交通機関を利用するのに比べて、金銭的費用や時間的費用が低下する。そのため、一度自動車向けの都市構造ができ上がると、自動車を利用することによる渋滞問題や交通事故が多発した場合においても、容易に公共交通への転移が起こらないという問題があるとも述べている。この論文から、利用者の減少により公共交通機関の維持が困難になるとともに、中心市街地での渋滞問題の発生など、多くの課題が生じていることも佐賀市に当てはまる事例だと考える。谷(2009)は、これまでに導入された公共交通の新機軸を概観し、地方都市が抱える公共交通の課題について検討している。その結果、自家用車利用から公共交通利用への転換を図るため、公共交通の整備と交通機関の連携を図ることが課題として挙げられている。特に郊外部では末端部の輸送を担うバス、自家用車、自転車などと連携した輸送システムを構築することによって、中量輸送機関としての機能が生かされるとしている。この論文から、公共交通とコミュニティサイクルを組み合わせた交通手段を提示することには意義があると考える。
アンケート調査と分析
本研究のアンケートデータ分析は、二値など質的データのための回帰分析の手段であるロジスティック回帰分析を用いる。回答者には交通系ICカードと学生証の統合に必要性を感じるかどうかを4段階で評価してもらい、性別・学年・交通系ICカードを現在所持しているか・居住地などから必要性の評価に至った原因を分析した。また、その評価に至った理由を文章で回答してもらい、交通系ICカードに対する潜在需要を調査した。本研究のアンケート調査は、2021年1月19日(火)~1月25日(月)にかけて、佐賀大学に在籍している学生のうち、2~4年生と2019年度卒業生、2018年度卒業生を対象にGoogle Formを活用したオンライン調査を行った。1年生を回答対象に含めなかった理由は、コロナ禍という特殊な状況下での大学生生活しか経験していないため、回答に不備が生じると想定したからである。回答者には、新型コロナウイルスの影響がなかった場合を想定した回答をお願いした。また、4年生と卒業生には、3年生時と4年生時それぞれの状況を分けて回答する設問も用意した。これは、4年生と卒業生は、コロナウイルスの影響のなかった学年を経験しているため、より信憑性が高いと想定したためである。回答分布は表1の通りである。
実際のロジスティック回帰分析にあたっては、表2の変数リストをもとに、表3と表4の分析においては被説明変数を「学生証と交通系ICカードの統合に必要性を感じるか」を1(YES)と0(NO)の二値で設定した。同様に、表5の分析においては被説明変数を「現在、交通系ICカードを利用しているか」を、1(YES)と0(NO)の二値に整理したもので設定した。そのうえで、説明変数には回答者の特徴を順次入れ込む変数増減法(ステップワイズ法)のもと回帰分析を行った。推定結果は表3~5に示してある。表2は、表3~5で使った説明変数とその意味をまとめたものである。
まとめ
本研究の目的は、佐賀大学の学生に交通系ICカードの普及を図ることで、既存の移動手段(バス、コミュニティサイクル、徒歩)を組み合わせて選択の幅を広げるとともに、スムーズな乗降を可能とすることによって、学生のモビリティを高めることができることを提示し、交通系ICの利活用の要因をロジスティック回帰分析で明らかにすることであった。今回、佐賀県の公共交通機関の主である「バス」に着目し、その利便性向上のため様々な観点からアプローチを行った。そして、佐賀県の抱える問題の1つである、「ICカードの利用率の低さ」の観点から、公共交通機関を組み合わせた登下校手段と交通系ICカードの利便性を学生に提示することで、少しは「バス」の利便性が向上するのではと考え、研究・調査に乗り出した。同時に佐賀駅周辺や佐賀大学内の放置自転車の問題、また佐賀大学の学生証に交通系ICカードの機能を搭載することが検討できるのではないかと考えた。新型コロナウイルスの蔓延により、オンライン授業が主になったことで学生の登校日数が大幅に減り、今回の新しい登下校手段の提案やキャッシュレス化を促すことには、追い風が吹いたと思う。アンケート結果では、「学生証と交通系ICカードの統合の必要性」はまだ登校日数の多い、2~3年生は必要性を感じていたが、ほとんど登校することのない4年生~卒業生は必要性を感じることが少なく、我々の想定通りの結果が得られた。必要性を感じる人の中で、「なくてもよいがあれば便利」という回答が多く、やはり公共交通機関の選択手段の数、バスの本数が少ない佐賀県では積極的に持とうとする人は少ないことが分かった。分析を始める際には、「どのような属性の人が交通系ICカードと学生証の統合に必要性を感じるのか」を求め、分析を始めた。分析結果は自分たちの当初の想定通りに、登校日数が大きく関与しており、また都市圏で生活をしている人も、必要性に関与しており、アンケート結果と整合的であった。学年に関しては、アンケート結果と整合的でないものとなったが、このことは、都市圏で交通系ICカードを利用している人、という説明変数を同時に組み込んでいたことに起因するものと推察する。この分析結果から、都市圏から佐賀大学まで通う高学年(4年生~卒業生回答)は、公共交通の利用頻度の高さから、有意な結果となったと考える。交通系ICカードを利用している人の要因には、バスを利用する日数が多い人が有意な結果となった。このことから、やはり交通系ICカードの利用率を高めるためには、利用できる環境が大きな要因となっているのではないかと考える。今回の研究では、佐賀大学生が交通系ICカードを利用する要因や学生証と交通系ICカードの統合にどれくらい必要性を感じているかなどについて調査することができた。さらに、このアンケートを実施することによって、回答者には、交通と徒歩、コミュニティサイクルを組み合わせた新しい登下校手段を提示する機会となった。今後、より様々な移動手段を組み合わせた交通手段が広まっていくことで、現存の公共交通とともに交通系ICカードの利用率が高まっていくことを願う。
no4.
留学生の災害情報に関する調査研究
調査・研究目的
本学がある佐賀県は東京、大阪、福岡などの主要都市に比べ、比較的災害が少ない地域ではある。佐賀県企業立地ガイドによると、データの残っている1923~2020年までの地震の発生回数(震度1以上の有感地震発生回数)を比べると、東京が28848回、大阪が1237回、福岡が1550回であるのに対して、佐賀は714回と圧倒的に少ないことがわかる。しかし、気象庁の過去データによると、大雨においては、2017年の降水量は1635mlと、2016年の2586mlから減少したものの、2018~2020年のこの3年は1877ml、2078ml、2876mlと降雨量が増加傾向にある。
我々のように日本人は、大小様々な規模の地震、大雨等の災害が頻繁に起こりうるため、日本人は、災害に良くも悪くも「慣れている」部分があるように感じる。しかし同時に、短期間しかその土地にいない、かつ地域の方との交流も少ない、言語にも壁がある外国人留学生が感じる災害の恐怖は計り知れないのではないかと感じた。そのため、我々の知り合いの留学生に「災害発生時の懸念・不安」について、意見を伺った。すると、複数の方から、「災害発生時の情報収集に不安がある」との声が聞かれた。ここから、外国人留学生を対象として、自然災害全般に対して、情報収集に対して現状どのような状況なのか、防災に関しての情報収集対する考え方を分析することでアンケートを通じて課題を明らかにすることができないかと考えた。また、災害時に、事前に入手していれば、災害時の停電、通信環境等に左右されず利用できる紙のパンフレットについては有用性があるのではないかと考え、アンケートの結果を元にパンフレットの作成ができないかと考えた。本研究は、外国人留学生が災害時におかれる状況の改善を目的として行う。外国人留学生の情報収集の志向性について、個人の属性をもとに分類し、どのような違いがあるのか調査を行う。アンケートデータの分析方法として、階層分析法(AHP:Analytic Hierarchy Process)を活用する。どのような項目を重視して、どの媒体を利用しているのか、また、個人の属性の違いによって志向性にどのように変化があるのか明らかにすることができる。仮にパンフレットを作成する際に、どのような内容のパンフレットが必要とされているのか。個人の属性ごとに、パンフレットの選択にどのような変化があるのかを明らかにすることができる。
先行研究
菊澤(2020)によると、災害時に外国人の持つ制約・傾向は「言語的制約」、「前提 条件の異なり」、「心理的不安」、「情報収集」、「多様な生活文化」の5つに集約される。また、災害時に用いられる言語には、平時の会話で使われないものも多く、重要な単語を理解できないことが指摘されている。上記に挙げられた制約は、日本語及び日本の土地や気象についての知識がないこと、もしくは知識を得られないことが原因ではないかと考えた。そのため、本研究では、知識を得るための手段として、情報収集の媒体について重点的に調査する。秦(2020)によると、災害の専門用語は、そのまま直訳しても、外国人にとって理解しにくいものである。そのため、発信者から受信者(外国人の方)への一方向の災害情報の発信では不十分であり、受信者の文化背景に配慮するなど、発信者と受信者の双方向による取り組みが必要だと指摘している。この指摘を踏まえて、本研究では、外国人留学生の方が置かれている現状、その背景を調査とニーズを同時に調査することで、今後の災害に関しての情報発信に意義があるものになると考える。
アンケート調査
本研究のアンケートデータ分析は、平常時の情報収集、緊急時の情報収集、紙のパンフレットについての3つの項目で佐賀大学の外国人留学生を対象に行った。平常時、緊急時の情報収集については、主な情報媒体であるSNS、WEBサイト、紙のパンフレットの3つの特徴をそれぞれ提示した。評価基準については、菊澤(2020)を参考に、外国人の方が持つ特有の制約があることから、情報を取得できること、取得した情報を理解できることが重視されると考えた。そのため、情報を素早く入手することができるかを判断する「情報入手のしやすさ」、情報の言語の理解しやすさである「言語的わかりやすさ」の2つを評価基準として設けた。また、外国人の方の置かれている状況によっては、情報の量や内容を重視する方もいるのではと考えた。そのため、細かな情報も必要なのかを判断する「情報量」、付近で起きた災害情報を確認する「災害の発生情報」の2つの評価基準を設けた。以上4つの評価基準で何を重要視して、どの媒体を利用するのかを回答していただいた。また、平常時と緊急時で、情報収集の媒体に変化があるのか調査を行うために、緊急時のアンケートに回答していただく際に、「停電によりTVから情報を得ることができない」「被害エリアの人たちの大量アクセスによる通信障害」「以上二つも含め、インフラ設備の復旧に時間を要すること」の3つの状況を提示した上で平常時と同じ設問のアンケートに再度回答していただいた。紙のパンフレットについては3つのパンフレットの特徴とイメージ図を提示して、「持ち運びのしやすさ」「内容理解のしやすさ」「情報量」の3つの基準でどのパンフレットを利用したいのか回答していただいた。アンケート回答者は表1に示す通りである。
アンケート調査結果
アンケート調査の結果、アンケートを被災経験の有無と日本での滞在年数によって属性分けを行った。結果は以下の図1、図2に示している。回答者の52名のうち、「被災経験がある」と回答した回答者は41名、「被災経験なし」と回答した回答者は11名であった。また、滞在年数においては、当初は日本人が大学に通う年数が一般的に4年であることを踏まえ、4年未満と4年以上に分けた。しかし、4年未満の回答数が多く、留学年数がおよそ2年以下であるため、「2年未満」、「2年以上4年未満」、「4年以上」の3つに分けた。
平常時の情報収集におけるAHP
図3のAHPは、外国人留学生に対し平常時に情報取集をする際に重要視することを聞いたAHPの階層図である。情報収集を行う際の評価基準として、外国人の方が持つ特有の制約を加味し、情報を取得できること、取得した情報を理解できることが重視されると考えた。そして、情報を素早く入手することができるかを判断する「情報入手のしやすさ」、情報の言語の理解しやすさである「言語的わかりやすさ」の2つを評価基準として設けた。また、外国人の方の置かれている状況によっては、情報の量や内容を重視する方もいるのではと考えた。そのため、細かな情報も必要なのかを判断する「情報量」、付近で起きた災害情報を確認する「災害の発生情報」の2つの評価基準を設けた。以上4つの評価基準で何を重要視して、どの媒体を利用するのかを回答していただいた。代替案として、通信障害の影響を受けない「紙のパンフレット」、インターネットで情報がまとめられている「ウェブサイト」、リアルタイムで情報を得ることができる「SNS」の3つを設けた。
図4はアンケートデータに基づくAHPの全体集計結果である。AHPの有効回答は52名である。平常時に情報収集をする際に重要視する要素の優先順位を見ると、全体の結果としては、「災害の発生情報」の項目が最も重要視されており、その次に「情報の入手しやすさ」、「言語的わかりやすさ」、「情報量」の順に重要視されていることがわかる。
被災経験の有無での集計結果
図5と図6は「平常時に情報収集をする際に重要視すること」を被災経験の有無でソートした集計結果である。この場合における被災経験とは、震度4以上の地震、または近隣河川の氾濫、停電を伴う大雨や台風、上記の全てを経験したことがある場合、「被災経験あり」としている。図5は「被災経験がある」と回答した回答者の集計結果であり、図6は「被災経験がない」と回答した回答者の集計結果である。図5と図6の比較から、被災経験による重視要素の差として、被災経験がある回答者は全体集計と同じような傾向にあるのに対し、被災経験がない回答者は「情報の入手しやすさ」を最も重要視していることがわかる。
日本での滞在年数による集計結果
図7~9は日本での滞在年数でソートした集計結果である。図7と図8の滞在年数が2年未満と回答した22名、2年以上4年未満と回答した16名の集計結果では全体と同じような傾向にあるのに対し、図9の滞在年数が4年以上と回答した14名の集計結果では、「情報の入手しやすさ」が最も重要視されていることが分かる。
緊急時の情報収集におけるAHP
図10のAHPは、緊急時における情報収集を行う際に重要視することを聞いたAHPの階層図である。平常時のものと同様に、外国人の方が持つ特有の制約から、情報を取得できること、取得した情報を理解できることが重視されると考えた。情報を素早く入手することができるかを判断する「情報入手のしやすさ」、情報の言語の理解しやすさである「言語的わかりやすさ」の2つを評価基準として設けた。また、外国人の方の置かれている状況によっては、情報の量や内容を重視する方もいるのではと考えた。そのため、細かな情報も必要なのかを判断する「情報量」、付近で起きた災害情報を確認する「災害の発生情報」の2つの評価基準を設けた。以上4つの評価基準で何を重要視して、どの媒体を利用するのかを回答していただいた。代替案は、平常時と同じ設定とし、通信障害の影響を受けない「紙のパンフレット」、インターネットで情報がまとめられている「ウェブサイト」、リアルタイムで情報を得ることができる「SNS」の3つとした。
図11はアンケートデータに基づく緊急時におけるAHPの全体集計結果である。重要視する要素の優先順位として、緊急時に情報収集をする際には「言語的わかりやすさ」が最も重要視され、続いて「災害の発生情報」、「情報入手のしやすさ」、「情報量」の順に重要視されていることが分かる。
被災経験の有無での集計結果
図12と13は、「緊急時に情報収集する際に重要視すること」被災経験の有無でソートした集計結果である。図12「被災経験がある」と回答した回答者の集計結果であり、図13は「被災経験がない」と回答した回答者の集計結果である。被災経験があると回答した回答者は、緊急時には全体と同じように「言語的わかりやすさ」を最も重要視していたが、全体と違う点として、2番目に「情報の入手しやすさ」を重要視していることが分かる。一方、被災経験がないと回答した回答者は、平常時に情報収集をする際と同じように、「災害の発生情報」を最も重要視していることが分かる。
日本での滞在年数による集計結果
図14~16は全体の中から、日本での滞在年数によってソートした集計結果である。日本に滞在している年数が日本に滞在している年数が2年以上4年未満、4年以上と回答した回答者は全体と同じように「言語的わかりやすさ」をそれぞれ図15と図16で最も重要視しているのに対し、2年未満と回答した回答者は、「災害の発生情報」を最も重要視しているということが分かる(図14)。
平常時と緊急時の比較
これまでの分析結果から図4の平常時の結果と図11の緊急時の全体の分析結果を比較すると、外国人留学生が平常時に情報収集をする際は「災害の発生情報」を最も重要視していたが、緊急時の情報収集の際には「言語的わかりやすさ」を最も重要視しており、平常時には最も重要視されていた「災害の発生情報」は2番目に重要視されていることが分かった。それに伴い、使用する媒体として、平常時、緊急時ともにSNSが中心となっているものの、緊急時には「言語的わかりやすさ」の観点から、紙のパンフレットを選ぶ回答者が平常時に比べ、緊急時にはわずかではあるが増加していることが確認できる。属性毎に比較した場合、図14~16を見ると、日本に滞在している年数が2年未満と回答した回答者が緊急時の情報収集の際に最も重要視していることが「災害の発生情報」であるのに対し、日本に滞在している年数が2年以上4年未満、4年未満と回答した回答者は「言語的わかりやすさ」を最も重要視しているため、外国人留学生にとっては日本という異国の地で滞在年数が増えるにつれ、言語的な壁にぶつかった経験があったため、このような結果になったのではないかと推測できる。被災経験ありと回答した回答者と被災経験なしと回答した回答者を比較すると、被災経験ありと回答した回答者は全体と同じように平常時には「災害の発生情報」を重要視し、緊急時には「言語的わかりやすさ」、「情報の入手しやすさ」を重要視する傾向があるのに対し、被災経験なしと回答した回答者は、緊急時でも平常時と同じように、「災害の発生情報」が重要視されている傾向があることが分かった。これは、地震によって起きた通信障害などで携帯端末やインターネットでの情報収集がしづらくなった経験があったからではないかと推測できる。
紙のパンフレットにおけるAHP分析
図17のAHPは外国人留学生が紙パンフレットで重要視することを聞いたAHPの階層図である。紙の大きさによってどのような差が出るのかを確かめるために、代替案として、図18の図に示すような「A4用紙三つ折りサイズのパンフレットA」、「A3用二つ折りサイズで見開き1ページのパンフレットB」、「A3用紙二つ折りサイズで見開き2ページのパンフレットC」の3つを代替案として設けた。また、代替案を選ぶ際の評価基準として、緊急時の持ち運びを問うためのした「持ち運びやすさ」、読んで簡単に内容が理解できるかを問うための「内容の理解しやすさ」、掲載されている内容の量を問うための「情報量」の3つを設け、アンケートに回答してもらった。
図19はアンケートデータに基づくAHPの全体集計結果である。重要視している要素の優先順位としては、「内容の理解しやすさ」を最も重要視しており、「持ち運びやすさ」と「情報量」に関しては、ほぼ同じ数値となった。パンフレットの種類に関しては、僅差ではあるがパンフレットA、続いてパンフレットC、パンフレットBの順であった。被災経験の有無での集計結果
図20と21は、全体の中から被災経験の有無でソートした集計結果である。両者ともに「持ち運びやすさ」という点からパンフレットAを選ぶ傾向にあったが、被災経験なしと回答した回答者は、「内容の理解しやすさ」という点において、パンフレットCを選ぶ回答者が多かったことも読み取れる(図21)。
日本での滞在年数での集計結果
図22~24は、全体の中から日本での滞在年数によってソートした集計結果である。滞在年数が2年未満と回答した回答者は、2年以上4年未満、4年以上と回答した回答者に比べ、パンフレットCの「内容の理解しやすさ」、「情報量」をパンフレットA、パンフレットBよりも重要視し、パンフレットCを選ぶ傾向にあった。2年以上4年未満と回答した回答者は、「持ち運びやすさ」を、2年未満、4年以上と回答した回答者に比べ重要視し、最も小さいパンフレットAが多く選ばれたことが読み取れる。また、滞在年数が4年以上と回答した回答者は、2年未満、2年以上4年未満と回答した回答者に比べ、「内容の理解しやすさ」を、2年未満、2年以上4年未満と比べて、より重要視し、パンフレットBを選ぶ傾向にあったことが分かる。
まとめ
本研究の目的は、外国人留学生を対象として、自然災害全般に対しての情報収集が現状どのような状況なのか、志向性を分析することでアンケートを通じて課題を明らかにすることであった。その現状調査を行う手段として、佐賀大学の外国人留学生を対象として、1)平常時に情報取集する際に重要視すること、2)緊急時に情報取集する際に重要視すること、3)紙のパンフレットで重要視することの3つのAHPを使用し、アンケート分析を行った。3つのAHPの分析結果より、外国人留学生が情報収集を行う際に最も重要視しているのが平常時では「災害の発生情報」、緊急時には「言語的わかりやすさ」、紙のパンフレットにおいて最も重要視することは「内容の理解しやすさ」であることが分かった。また、代替案として、情報収集を行う際には平常時・緊急時共に「SNS」がメインとなってはいるものの、緊急時には「ウェブサイト」が数値を落としているのに対し、「紙のパンフレット」は数値を伸ばしていることも明らかとなった。これにより、紙のパンフレットにも一定数の需要があることが分かる。属性別に見ると、日本に滞在している年数が4年以上と回答した回答者は「情報量」の数値が平常時・緊急時の情報収集、パンフレット全てにおいて最も低いことが分かる。これは先行研究の田村(2018)にある「ストック情報の蓄積が不足している」という点において、日本での滞在年数が増えていき、日本で経験を積んでいくにつれ、ストック情報が蓄積されたため、来日当初に比べ、必要な情報量が減少したからではないかと推測できる。本研究では、外国人留学生が情報収集や紙のパンフレットにおいて重要視している要素を調査することができた。今後、コロナ禍が収束するとさらに留学や移住などで日本に来日する外国人が増加することが予想される。自然災害が多い日本の中で、外国人向けのインフラ整備など、日本語がわからない外国人でも手軽に情報収集が行える術を増やすことができれば、今以上に外国人にも安全で快適な生活を送ってもらえるようになるだろう。